アニメーション版の感想です。
面白かったけど、登場人物についていけなかった。
ケイ
猫を身代わりにしようというのは悪役の発想。
親を捨てるというのは設定としては面白いけど、本当にやったら引く。
記憶を失ったハルキに対して、涙を流したらリセットするだろうと計算しているのも酷い(桜の木のシーン)。
最後、愛するつもりもないのに、ソウマをキープするのも嫌な感じ(月が綺麗とか言って)。
作中で神格化されすぎていて、共感しづらい。
あんなに自信満々なのに、サクラダの問題の長期的な解決についてはノーアイデアなのはがっかり(24 話もやったのに・・)。
個々の問題を解決しても、良かったねというより、腹黒い、あざといという印象が先立ってしまう。
人間味が薄い。
こういう人物設定が良くないというわけではなく、これはこれで意図を持ってそうなっているのかなとも思います。
この物語のバックボーンの一つに『思考実験』があり、常識的な判断が必ずしも肯定されていない世界では、ケイのような人物像は自然かもしれません。
行動原則は、
- 問題を見つけて、それを解消したい
- 問題解消のためであれば、他人の意思は無視できる
- 予断を持たず、前提条件も疑う
- トライアンドエラーによる検証で裏付けを取りたい
ソウマ
どんな計画のためでも、生き返ることが確定していても、生命を捨てるのはアカン(実際にそれが原因で心に傷を負っているし)。
ケイに執着しすぎていて怖い。
序盤の思わせぶりな話し方が印象悪い。
涙を隠すためにシャワーを浴びるのは不自然すぎる(ケイに目隠しさせるだけでも良かったのでは? それか別室から電話で話すとか)。
愛する人のためにアイデンティティを喪失する(しかもそれが報われることなく、自分は愛されない)ことは崇高な犠牲であり、本来的には心を揺さぶるような行動であったのに、描かれ方のせいか、ハルキの存在のせいか、茶番っぽくなってしまっていて可哀想。
ソウマはサクラダの外に解放してあげたほうが綺麗なお話になったと思う。
行動原則は、
- 自分を犠牲にしてもケイの最大幸福を実現したい
- ケイと恋愛関係になりたい
- 問題は一人で解決したい
ハルキ
ケイ大好き、ソウマは受け入れられないというのは正直で良い。
ケイが優秀だというのは半分くらいがこの人の主観。
常にケイの力になりたいという気持ちは伝わった。
ただ、ほとんどの場合にケイの言いなりで、主体性が感じられないため、魅力的な人物とは感じられなかった。
ケイに対する信頼とケイへの依存の間を揺れ動いている感じ。
(ケイ以外の)他人に興味がないようで、たまに冷淡だったり辛辣な印象を受ける。
感情移入はできない。
その他
マクガフィン(サクラダの能力を支配するキーアイテム)が結局マクガフィン(本質を持たない無意味な小道具)だったのは残念。
全能力を支配するという展開は『シャーロット』が実現しているので、期待してしまいました。
時間の操作を題材にしていて、主人公が記憶に関する能力を持っているという点では『シュタインズ・ゲート』と設定が似ている(ケイの能力はリーディング・シュタイナーと同じ)。
みんなが虚勢を張ってる感じがするサクラダよりも、人間味あふれるシュタゲ世界の方が好き。
中高生の時に観ていたら、もっと印象が違ったかもしれない(良い意味で)。
自意識が固まっていない時に見ていたら、色々と考えることも多かったかもしれない。
ただ、やっぱり人間の代わりに動物(猫)を犠牲にする世界観は受け入れられなかったかな。
しかも、それをフォローする台詞をノノオさん(猫好き)に言わせるのは印象が悪い。
良かった点
絵が綺麗。
音楽も良かった。
設定も面白い。
- 能力が一つの街の中だけで有効であること
- 世界中に広まろうとしていたところを、能力で範囲を限定させていること
- 範囲を固定化するために、犠牲が払われたこと
- 能力を管理する組織
- その組織の犠牲者
特に、ある一つの街でだけ能力が認識されていて、その外には全く知られていないという二重性は面白い。
日常と地続きで非日常が存在している感じ。
猫と気持ちが通じあえるとか、夢の世界に入れるとか、定番だけどワクワクする能力。
意外性のある、先の読めない展開が多く、物語の推進力になっていた。
特に前半は世界の成り立ちがわかっていない状態だったので、純粋に楽しめた。
ケイが相手を倒すのではなく、相手と共存することを選んだのは良かった。
ただ、本当の意味での和解は難しそう。